大学院音楽学研究室ブログ-Osaka College of Music

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授業の風景 音楽探検(part 2)楽器資料館

「音楽探検」(水曜2限・短大選択)の授業で今回は、楽器資料館を訪ねました。
2000点の所蔵楽器のうち1400点が日本の楽器で、日本の楽器数は国内随一だそうです。(ということは世界的にも貴重ですね!)

 音楽史等の授業でもみなさんご存じの通り、クラシック音楽を扱う西洋音楽史では、例えばバッハが生まれたのが1685年、ベートーヴェンは1770年、日本では江戸時代。最近特に注目が高まっている古楽と呼ばれるカテゴリで15〜16世紀です。 それに対して、資料館を入ってすぐに展示されている、コトを奏でる埴輪(レプリカ)は5世紀、笙や篳篥を奏する雅楽の存在は、701年の大宝律令に明示されているなど、バッハやベートーヴェンの生きた時代からおよそ1000年も遡った時代のことなのでした。 先ごろの天皇陛下の譲位、改元の折の儀式の報道から聴こえた楽の音もさかのぼれば千年以上の歴史があります。宮廷でおこなわれる種々の楽舞の演奏や伝習を行う公的な機関として、「雅楽寮(ががくりょう:「うたまいのつかさ」とも)」が設置され、400人の楽人がそこに仕えていたことは国の統治と音楽が密接に結びついていたことを示しています。それが今日まで引き継がれているのですね。 また、琵琶のコーナーでは、世界地図とともに、古代ペルシャ(イラン)からシルクロードを辿り日本へと、土地土地で形を変えながら旅をした楽器に、悠久のロマンが香ります。 資料館中央部は、西洋音楽の楽器が。モーツァルトの頃からリスト、ドビュッシーの時代まで作曲家や演奏者の要望でみるみる発展したピアノを6台、実際の音を聴き比べました。 そして一番奥には、アジア、アフリカ、オセアニアの楽器がならび、一気にエキゾチックな雰囲気。西洋音楽のドレミ音階で作られた作品を演奏する楽器と、そうでない楽器の違いは、五感に鮮やかで南米大陸、アフリカ生まれのブォォォ〜ン、チュルルル…と揺らぎ満点な鳴り物楽器に、しばし夢中になりました。 個人的には、文楽の太棹三味線で毎回陶然となり、時に心地よいまどろみに誘われるこの現象は、何か西洋音楽のドレミでないところへの身体反応なのではと日頃から感じています。
 ドレミの音楽が、日本の現代社会で大きなシェアを占めているのは間違いのない事実ですが、46億歳の、このまぁるい地球の歴史から見れば、その一部のエリアで、ほんのここ数百年に急速に発展した文化のうちの一つであることも事実です。 古来からの世界中の楽器を媒介に、歴史の縦軸、移動伝播〜地理という横軸を意識すると、音楽と私/クラシックと私/といった、音楽に関わる限り考え続ける命題に1つの手がかりが生まれるように思います。 楽器資料館は学内はもちろん、一般の方にも公開されており、見学ツアーも定期的に開催されています。 詳しくはこちらから。
https://www.daion.ac.jp/campus/museum/ 今回、解説をして頂いた学芸員をはじめスタッフのみなさん、大変お世話になりありがとうございました(松本京子)。

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