音楽畑秋号を発行いたしました。
たいへん遅くなってしまいましたが、合宿特集です。
<音楽畑夏号Contents>
●巻頭言 井口淳子/ 変わらない上海
●夏期合宿特集!
[2回生] 平井伽南
[3回生] 京谷政樹/野口沙樹/橋垣亮佑/道盛建児
[4回生] 大場美緒/福岡佳奈/山中直/山村磨喜子
[院1回生] 奥坊由起子
●お知らせ
●編集後記
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巻頭言をご紹介します。
【音楽畑 2010年度 秋号 巻頭言】
変わらない上海
井口 淳子
日中間に暗雲がただよい始める直前に上海に10日間滞在した。目的は上海の洋楽受容に関する調査だったのだが、「世界一速いスピードで変化する都市」と称されるこの街をじっくり見てみたいという思いも強かった。
飛行場からリニアと地下鉄を乗り継ぎ、スムーズに目的の小さなホテルに到着した。フロントに女性が立っている。予約を入れていることをつげ、チェックインの手続きをしているあいだ、なんと、彼女はずっと棒つきアイスキャンディーをなめ続けている。あっ落ちそう、とひやひやするも、最後まで手続きとキャンディーは同時進行であった。
翌日から市内をあちこち移動する。タクシーに乗ることもある。ある夜、運転手が突然、急停車して、飛び降りると後ろの車の運転手と激しい喧嘩をはじめた。まつこと数分間、もどってきてもなんの釈明もなく、無言で車を急発進させる。彼のシートの後ろには「歓迎、世界博へようこそ…」の笑顔の液晶パネルがむなしく輝いている。
ホテルの近くは、高級ブティック街の淮海中路である。海外ブランドのショップがならぶそのすぐ裏通りを、肩に籠をかついだ果物売り汗だくで歩いていく、おしゃれな女性がすかさず声をかける「一斤(500グラム)いくら?」。
お菓子屋さんの前に行列ができている。9月は月餅の季節なのだ。日曜日ともなると皆、紅い月餅の袋を持って歩いている。親戚や友人に配るこの習慣ははじめて上海に来たときとなんら変わっていないようだ。
結局、私には上海は20数年前とさほど変わっていないようにみえた。街の姿は変わっても、ひとは簡単には変わらない。こういうことは直接その地に出向かないとなかなかわかりにくい。
学生時代にこそ、その土地の「素顔」にふれる旅をしてほしい。
(2010年10月5日)
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(く)