2020年春から始まった科研基盤Bの共同研究、コロナと時期を一にしたため、海外渡航もできず、どうなることかと思っていましたが、幸い、仏語新聞と2019年に資料調査した外交文書など大量のデータがあり、作業は地道に続けることができました。
そして、ようやく、今月末にその研究成果が刊行されます。
「上海フランス租界への招待 — 日仏中三か国の文化交流」勉誠出版。
目次は次の通りです。音楽学からも5名が執筆陣に。そのほか外交史、美術史、比較文化、文学など多彩な執筆陣が力作をお寄せくださいました。(井口)
はじめに 上海フランス租界への招待 榎本泰子
「東洋のパリ」上海フランス租界地図
第Ⅰ部 上海で花開いたフランス文化
フランス租界を芸術の都に――シャルル・グロボワが築こうとした東西の架け橋 井口淳子
上海のフランス語ラジオ放送(FFZ)と音楽――グロボワ制作の芸術音楽番組を中心に 森本頼子
一九三〇年代フランスのラジオで放送された芸術音楽――フランス音楽の扱いにみる本国と上海の特質 平野貴俊
文化政策としてのフランス音楽――上海フランス租界の時代を中心に 田崎直美
グロボワ音楽評論抄 関デルフィン笑子(翻訳) 森本頼子(解題・訳注)
【コラム】グロボワをもとめて――上海からブールジュへの旅、一九八七年〜二〇二二年 井口淳子
【コラム】私がグロボワに「触れる」まで――コロナ禍を超えて 藤野志織
第Ⅱ部 異文化交流の舞台としての上海
上海租界のフランス語新聞Le Journal de Shanghai (1927-1945) ──文化欄を支えた多国籍の執筆陣 趙怡
上海で育まれた友情――クロード・リヴィエールとテイヤール・ド・シャルダンの出会い 馬場智也
上海アートクラブとアンドレ・クロドの仲間たち 二村淳子
黒石公寓(ブラックストーン・アパートメント)をめぐる物語 蔣傑(翻訳:和田亜矢子)
オーロラ大学におけるフランス語教育と新文学の人材育成 任軼(翻訳:和田亜矢子)
【エッセイ】伝説のピアニスト上海失踪の謎 椎名亮輔
【コラム】上海フランス租界の光と影 藤田拓之
第Ⅲ部 欧州と極東を結ぶイマージュ
文明か国家か――駐日フランス大使ポール・クローデルの中国観 学谷亮
在外教育・文化機関におけるフランス語蔵書の意味を考える――上海アリアンス・フランセーズと関西日仏学館を例に 藤野志織
パリ・上海・東京、三都をつないだフランス語図書 野澤丈二
芥川龍之介と「彼」の上海の夜 榎本泰子
上海フランス租界関連年表