大学院音楽学研究室ブログ-Osaka College of Music

大阪音楽大学大学院音楽学研究室に関連するお知らせをお伝えしていきます。研究室mail address:ongakugaku@daion.ac.jp 最新情報はTwitterで!

大学院入試にむけて

水曜の3限に「音楽学講義」という授業があります。実はこの授業は英語で書かれた音楽学の専門書を講読する授業で、すなわち大学院を受験する学生向けに設定されています。

いつもは少人数で和気あいあいと、音楽学資料室で講読をしつつ、関連する音源をきいたり、海外の音楽ミュージアムや有名図書館のサイトを見たりとゆっくりペースで進めていますが、今週から「模試」を行うことになりました。

本番さながらに電子辞書ではなく紙の辞書を持参し、緊張のなかで問題と格闘すること1時間。そこでわかったことは、持参した辞書が中学時代のものなら、そもそも辞書に問題中の単語が出ていなかったり、単語の意味のなかに音楽上の意味が出てこなかったりすることでした。

atonalやpantonalといった単語がでてくる問題だったので、辞書にない!と青くなったわけです。

 

大学院はもともと定員が少なく、学部と異なり競争率が高くなっています。入試は9月と翌年の2月の2回、行われますが、9月に合格者が多く出た場合、2月は非常に狭き門となるので、注意が必要です。

詳しくは大学ウェブサイトの入試関連ページをご覧ください。

https://www.daion.ac.jp/examination/admission/guidelines/graduate/

 

この授業をきっかけに、何を専門とするにしても音楽学(的思考)が必要だと感じてもらえるよう、魅力的な講読英文を選ぶように心がけています。

受講生全員の合格を願っています!(井口淳子)

授業の風景・音楽探検@「ミュージカル歌唱法」(短大ミュージカル専攻・松田ひろ子教員)

前期も第3コーナーを回り、ただいま「声」にまつわるジャンル・形態さまざまな授業に迫るウィークです。
前回の「クリエイティブ・ヴォーカル演習」に続いて「ミュージカル歌唱法」の授業へ「音楽探検」(短大・選択授業)隊が潜入。
ご担当は松田ひろ子先生。

入学して数ヶ月、授業開始前からの各自ウォームアップや背筋ピン!挨拶ビシッ!はミュージカルの舞台を目指すコースならでは。
授業では不朽の名作ミュージカル『コーラスライン』から「one」、『ウエストサイド・ストーリー』から「I feel pretty」を練習中です。
ようやく馴染んできたところという振りをつけ、次はドラマとして表現しつつ歌う訓練。

振りをつけると発声が落ち着かなくなること、ピアノの間奏の音形の意味を考えること、一人一人のキャラクターの感情を読み取り表現することなどなど、舞台人を目指す皆さんへ実践的な指導が行われていました。

日頃、舞台音楽の創作現場に触れる機会もあり、メロデイとリズム、ハーモニーでドラマを表現する面白さは身近です。
この日歌われていたバーンスタインのピアノパートの秀逸さにも改めて感じ入った次第でした。

舞台の稽古場の、華やかな中にも躍動感があり引き締まった雰囲気は、オペラともまた違った独特の空気が漂っていますね。
授業終了後には、松田先生へ突撃!質問に伺った学生も。
クラシックとはアプローチの異なるウォーミングアップの方法に触れて、
逆に普段抱えている疑問解決のヒントを得ることもあったのではないでしょうか。

7/7のオープンキャンパスでは高校生の皆さんへこの日練習中だったナンバーを披露するそうです!  


ところで、ミュージカルとオペラ、この2つの舞台芸術についての面白そうな連載が、
Webマガジン「ONTOMO」で始まっています。


「音楽ファンのためのミュージカル教室 第1回
ミュージカルとオペラは何が違う? 昨今の潮流における密接な関係」
 https://ontomo-mag.com/article/column/musical-01/?fbclid=IwAR0K3Kl9XajfzGc7njuvfrIE2mfHvVj1VL1FpA7PEuKsjUFoIZ0xKjdDN9g

兵庫県立芸術文化センターでは、この夏まもなくバーンスタインのオペラ「オン・ザ・タウン」上演も。

こちらも楽しみです!          (松本京子
 

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授業の風景・音楽探検@「クリエイティブ・ヴォーカル演習」(岡崎雪先生)

短大「音楽探検」の授業で「クリエイティブ・ヴォーカル演習」(岡崎雪先生)を見学してきました。

 

楽器資料館見学や雅楽バロックダンスの授業へ伺い、奈良時代の日本からルイ王朝のフランスなど

過去を振り返り新たな発見を得てきた「音楽探検」も前期の第三コーナーを回り、

ググイと方向転換、今回は「いまどき」の音楽シーンに触れてきました。

 

ミュージック・クリエーション専攻2年の皆さんが履修する「クリエイティブ・ヴォーカル演習」

岡崎雪先生)は、別の授業で作詞作曲した曲を、自ら歌い、クラス内でディレクションとフィードバックをしあう演習です。

ご自身もヴォーカリストである岡崎先生からは、歌い手の立場から実践的なアドバイスがサクサクと。

ちなみに、楽曲提供したい歌手の想定もあり米津玄師や椎名林檎NMB48といったアーティスト名が記されていました。

 

とにかく新鮮!というのが見学に伺った学生の皆さんの声、声、声。

ふだんの授業やレッスンとの違いから感じた驚きや発見は実に大きかったようです。

パソコンが支給され、自作曲を自身で歌うことや、コンピュータで音源を作ることは

特にクラシックを専攻して、楽器に自身の声に向かう日常とは大きな違いなのでしょう。

ふだんポップスをよく聴いていても、その作品を作る過程のことはイメージしづらかったかもしれませんね。

 

マイクを使い、メロディとリズム、ハーモニーを的確に表現する技術は、

クラシックとはまた異なりますが、それぞれの道で奥深いものです。

2人1組でハモり(パートチェンジもあり)自作曲を歌ったあと、ディレクションして欲しい人を

指名すると、その人は瞬時に具体的・的確に「〇〇の部分を~~のように××して」と伝えなければなりません。

こうしたやりとりが、見学した履修の皆さんには特に新鮮に感じられたようです。

 

「ふだん」との大きな違いを感じ取った今回の見学については、

その「違いの中身」をこのあとの授業内で掘り下げる予定です。

そこには、クラシックを演奏すること、また企画やプロデュースへのヒントもありそうです。

 

自身が学ぶ音楽、それがクラシックであるかないかに関わらず、

雅楽民族音楽古楽バロックダンスにポピュラー音楽をクリエイトするetc.

これら授業の振り幅の広さは、音楽大学ならではですね。

音楽学では、こうした実演の学びを支える”背骨”となる授業を開講しています。

 

「声」による表現をジャンルや形態、さまざまな角度で掘り下げるこの数回の授業、

次回は「ミュージカル歌唱法」に触れます!(松本京子

 

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授業の風景 音楽学講読・民族音楽学講義(学部・井口淳子教員)

大学正門入ってすぐ前にH館というガラス吹き抜けの建物があります。

この建物はいわゆる研究棟(教員の研究室が並ぶ)なのですが、2階に「音楽学資料室」という部屋があります。壁一面が事典や楽書で埋め尽くされています。

そこで少人数の授業を行っています。

たとえば、前期ですと、音楽学講義、これは音楽学の英語専門書を講読するという少数精鋭の授業です。受講生のほとんどが大学院進学を目指し、院試の準備という目的で受講している少し特殊な授業です。予習の量からすると学内でも有数の授業ではないでしょうか。

もう一つは民族音楽学講義です。

こちらも「諸民族の音楽」(教職必修科目)という大クラスではできない内容をこころがけています。実際にムックリシタール三線が登場し、使用される音源はかなりマニアックなものです。今期は作曲専攻やミュージック・クリエイションの学生が素晴らしい反応をみせてくれるので、時に脱線することもあります。

少人数の場合、時には紅茶をふるまったりもします(先週は教員出演のラジオ番組を聴き、その内容についてお茶をのみながらディスカッション!)。そんな授業はおそらく他にはありませんね。

少人数なので、学生どうしが専攻をこえて仲良くなったり、学生と教員の距離もぐっと近づきます。

写真は授業で意気投合したギターとヴァイオリンの(かつての)受講生のデュオです。豊中市の「ぬくもりサロン」というシリーズで市内の銭湯で演奏をお客様に届けるユニークな活動です@蛍池「幸福温泉」

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6月24日 魅惑のバロック、チェンバロからダンスまで 速報!

24日(月)、本学B401教室にて「魅惑のバロックチェンバロからダンスまで」が開催されました。

チェンバロは2名の教員と現役学生によって、ヴィオラ・ダ・ガンババロックダンスは本学講師、イタリア歌曲には大学院修了生と、多彩な出演者による充実の90分でした。最後は、全員でチェンバロ伴奏でメヌエットを踊り、終演後もなかなか散会にならない盛り上がりでした。

古楽サークルをつくろう」という声も学生からあげられています。

豊富な楽器と、やる気満々の先生方によって、音大の第?次バロックブームがおとずれそうな気配です。

とりあえず、昨夜の写真をご覧ください!

 

井幡万友美、樋口裕子、上田牧子の三先生

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学部生、金山将太さん

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片山美穂さんと能登原由美先生、

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上田牧子先生

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体験学生

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片山美穂さんと京谷政樹先生

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樋口裕子先生と学生たち

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授業の風景 「舞踊・音楽演習(学部専攻科・必修授業)」(樋口裕子先生)

「音楽探検」受講生の皆さん(声楽、フルート、クラリネット、サックス、電子オルガン)とともに今回は「舞踊・音楽演習」の授業におじゃましました。

バロック時代、ヨーロッパの宮廷で貴族たちが踊っていたメヌエット、ブレ、ガヴォット等、今日では演奏されるだけになってしまった舞曲の数々を、実際にステップを踏むと同時に舞曲史・バレエ史の講義も交えて行われる授業です。

この日のテーマは「ガヴォット」。

学生たちは日頃のレッスンでは、バロック時代の舞曲にさまざまな形で触れることがあることでしょう。
たとえばフルートならバッハ「無伴奏フルートのためのパルティーイ短調」はアルマンドクーラントサラバンド、ブレー・アングレーズ (英国風ブレー)と4つの舞曲から構成されています。

ほかにも有名なところで、バッハの無伴奏ヴァイオリンやチェロのための組曲フランス組曲、ゴセックのガヴォットなど。

樋口先生作成のプリントでは、時代が下ってプロコフィエフ「10の小品」やシェーンベルク「ピアノ組曲 OP.25」も舞曲の例としてあげられていました。

先生いわく、なるべくいろいろな楽器の作品をあげるようにされているとのことでした。

フランスのルイ14世時代、宮廷での宴や舞踏会の様子が描かれている映画「宮廷料理人ヴァテール」の映像をみながら、当時の階級による厳格ドレスコードやマナーについて、詳細なレクチャーが行われます。

帽子をかぶったままでよいのは、その場にいる中で、一番位の高い人だけだそうで、確かに映像でもルイ14世だけが最後まで帽子をかぶったままでした。

なお、J.S.バッハハイドンなど「宮廷音楽家」として仕えた音楽家たちは、やはり宮廷でのマナーや舞踊を身に付けていたそうです。

そうでなければ、宮廷で長く任務を果たすことは難しいということなのですね。

入念なストレッチと、バロックダンスの基本の足ポジションを行い(クラシックバレエと微妙に違いました!)

前回の復習として男性と女性それぞれお辞儀の作法、男性の帽子の脱ぎ方を実践し、いよいよガヴォットのステップへ。

元々が寒い地方のダンスのため、暖をとるために跳躍が多く使われているというガヴォット、

これが超ハードでした!

2拍子系が多く、アウフタクトを感じては(跳躍)、1拍目で着地し、また…の繰り返し

(言葉で書くのは難しいのですが)。

授業見学として伺いましたが、樋口先生から「ご一緒に!」のお言葉を頂き、

見よう見真似で実際にステップを、奮闘しました!

終了後「きつかった!」との感想多々。確かにハードです。上半身をしっかり引き上げ足を細かく動かすと、かなりの運動量です。

当時は衣装も重たかったはずで、宮廷貴族も体力が必要だったようです!

余談ですが、高校生の頃、バッハの「フランス組曲」第5番のガヴォットをピアノで弾いたとき、

このアウフタクトと1拍目の着地感がどうしても上手く身体になじまず大苦戦した思い出があります。

レッスンでちょっとステップらしきことを踏まされた(いえ、ご指導いただいた)がうまくできなかった

ことも思い出しました。

身体表現を伴うオペラやミュージカルだけでなく、

歌ったり、楽器を演奏したりするにも、舞曲のステップを理解し、個々の作品のリズムやテンポの感覚を

身体で感じることが欠かせないと感じた授業見学となりました。

 

音楽学における「音楽史」で時代背景や社会的位置づけを、こうした舞踊の演習授業で実際にステップを踏むことは、作曲や演奏、また音楽マネジメント/プロデュースなどさまざまな専攻で今後に生きるだろうと思えます。

 

なお、学部では専攻に関わらず、専門教育(共通)で「西洋古典舞踊」の選択が可能です。

 

そして最後にご案内を。

樋口裕子先生にもご協力いただき、音楽学研究室の主催として行うのが、すでにこのブログでも投稿されている

6月24日の「魅惑のバロック チェンバロからバレエまで」演奏会です。

ぜひ、ナマのバロックダンスを、チェンバロヴィオラ・ダ・ガンバとの共演でご覧ください。

また、6月27日には、豊中市立文化芸術センターで樋口先生ご出演の「王のパヴァーヌ、王のシャコンヌ」というゴージャスな公演が開催されます!!

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授業の風景・雅楽演習(学部選択・水曜2限)

 今年は平成から令和への改元にまつわる儀式などで、しばらく雅楽の音をメディアから耳にする機会も多くなりそうです。

  先日、楽器資料館でも見学し、その1300年を越える歴史に驚きの連続であった雅楽について、「雅楽演習」の授業を見学しました。

 

 学部生が選択できるこの授業では、前期に篳篥龍笛、笙の三管の演奏法と合奏の演習を毎週行っています。

 見学ではありましたが、ご担当の前川哲雄先生のご配慮で、やってみたい楽器を触らせていただけることに!(ありがとうございました!)

 

 雅楽は、西洋音楽とは楽譜も、拍の感じ方も異なります。

 「間(ま)」が拍の中に、次の準備をするために必要な要素として取り込まれているのですが、西洋音楽で均等な拍節感を叩き込まれていると、雅楽の拍子をとろうとすると頭とカラダがちぐはぐに(汗)

  また、楽譜では「越天楽」での篳篥龍笛の冒頭が「チラロル〜」と唱歌(しょうが)で表記され、拍の長さや小節にあたるのは漢数字や丸印。ほぼ外国語を学ぶような感覚でした。

  私が触らせて頂いた17本の竹の筒からなる笙では、そのうち15本の竹を、手のひらで楽器を包むようにし、指を微細にずらしながら音を変えます。

  円状の運指表では、例えばリコーダーなどの運指表に慣れている頭の回路が、容易に切り替わらないことも痛感、しかしながら、指をなんとか押さえ息を吹き込んでみると、まるで虹のシャワーが降り注ぐような衝撃!

 8世紀の日本に、すでにこうした楽の音を美しいと感じる文化が根付いていたわけですね。バッハの生まれる実に1000年近く前のことです。

  以下、履修生の皆さんからは

下記のような声が聞かれました。

  • タンギングは絶対してはいけないというのになかなか慣れなかった。日本の笛は全てしないそうだ。
  • 楽器の取り出し方、置く方向など、ひとつひとつの所作に意味があり、次の行動へとスムーズにいけるようにされていて、昔の人はとても合理的だと思った。
  •  もっと雅楽について学びたいと思ったので、また図書館や楽器資料館に行こうと思う。

                             (松本京子

笙と龍笛 唱歌(しょうが)が記された雅楽

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前川先生

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