センター試験のニュースのあれこれのなかに、現役高校生が「就職に有利な大学を」というような趣旨の発言をしていたり、新聞でもそれに似た内容の記事が出ていました。
何を4年間学ぶかを真剣に考えるべき時期なのに、そのあとの、いってみれば「ひとに雇われ労働する」ことをあれこれ心配しているらしい。
就職は4年間、何を学んだか、ということの先についてくるものでしょう、とあえていいたい。
音楽大学は一般に就職に不利だという誤解が蔓延していますが、それはまったく根拠がありません。むしろ、今年の4回生のIさんのように、4年間、フルに民族系の楽器をマスターし、なおかつ音楽学でもきっちりと基礎力をつけた人は、伝統芸能の舞台裏を支えるユニークな会社に就職が決まりました。
この会社は江戸時代にさかのぼる歴史をもち、就職試験も、伝統芸能の基礎的な知識や文章力を試すものだったとか。
即戦力になりそうな他大学の学生よりも、Iさんを選んでくれたこの会社は、おそらく長い目で社員の育成とか活躍を期待しているのでしょう。
卒業生のなかにも、回り道をした上で、今、これこれの仕事をしていますとか、教員採用試験の最後のところでだめだったけれど、再挑戦します、といった年賀状が目につきました。
そんなに急がなくても、勉強をしているうちに、やりたいことが見えてくるはず。好きではない、夢中になれない、そんな中途半端な気持ちでつとまるほど「仕事」というのは易しいものではないのです。
そして音楽やその周辺につながる業界は、4年間必死に学んだ学生を待っているはずです。