大学院音楽学研究室ブログ-Osaka College of Music

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音楽学と教育現場


二日連続で教育実習校訪問へ。

炎天下のなか、方向音痴の私は40分ぐるぐる歩く羽目になったり、昼食難民になりつつも、考えさせられることが多い訪問でした。

 1日目は中学1年クラスで「浜辺の歌」を取り上げていました。およそ百年前に作曲されたこの曲を、いまも授業で皆が歌うということ、そのことの意味を考えずにはいられませんでした。「共通教材だから」、「この曲を指導することになっているから」というところで思考が止まってしまうと生徒との間に大きな溝がぽっかり開いて、それを埋められないまま授業が進むことになりがちです。海や波をテーマにした様々な作品を出しつつ、百年前にこの曲が生まれた時にどのような感動があったのか、想像を膨らませてみよう、という授業だともっと生徒たちの目が輝いたかなあと思いました。

2日目は3年生クラスで「リズム」をとる練習に続き、ムソルグスキー展覧会の絵」の鑑賞でした。とても真面目な生徒たちで懸命にリズムをとり、誰一人として手足を動かさない人はいません。そんな生徒たちに、CDでの再生音ではなく、ピアノ専攻なのだから自分で演奏してみては?とコメントしました。せっかく教室にグランドピアノが鎮座しているのに、そしてそこに現役のピアニストの卵がいるのにCDを流すなんてもったいない!

 毎年感じることですが、音楽という科目は他の科目と異なり、感動と感性が前提にあります。教える側がワクワク、ドキドキ、ウルウルしないと、音楽を教える意味がないと思うのです。もちろんカリキュラムのしばりや評価をどうするかなどなど多くの制約はありますが、まず自分がおもしろい、すばらしいと感じ、それを伝えたいと感じなければ、わざわざ学校で音楽の授業を行う意味がないと思うのです。

生徒が自宅で夢中になって聴いているポピュラー音楽と授業の音楽との乖離が大きいからこそ、「おお、こんな音楽の世界があるのか!」と思わせる必要があります。でないと、音楽は大好きだけど、授業は退屈、となってしまいます。

実習生は懸命に頑張っていましたし、ほめてあげたいところはたくさんありました。

ここに書いていることは音楽学が音楽教育に積極的に関与してこなかったことへの反省でもあります。教職必修科目を教えている自分自身が、もっと授業中に「教壇に立った時にこんなことも生徒に伝えよう」「この面白い実践を先生になったら学校でやってみない?」と学生に自分で考え、工夫することを促す授業にしなければ、と思うのです。

 二校ともに校長先生、教頭先生、担当の先生がたとお話しでき、おそらくベテランの先生方は全てお見通しで、温かく見守ってくださっていると感じました。日常業務外に実習生を受け入れてご負担も大きいのに、先生方の姿勢に頭が下がりました。(井口)

 

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ドクダミが花盛り。